以前に「我が子が不登校になったら」で、有田秀穂氏の「セロトニン欠乏脳」(NHK出版)からの引用で、氏がセロトニン神経を鍛えるための方法としてあげていた、いくつかの具体例を書きました。
例えば、リズム運動やチューインガムを噛む、呼吸法などを書きました。今回は、このセロトニン神経を鍛える、育てることを、不登校になったらという視点で、整理してみたいと思います。
まず、セロトニンとは、どういう物なのかを整理します。
セロトニンは脳内の神経伝達物質の一つで、不安を抑え、食欲や自律神経を活発にし、心身の健康を支えるもの、そして、セロトニンが不足すると、健康を推進する機能が低下し、ストレスに弱く不安が高い状態になると言う働きを持った脳内の物質である。
成田奈緒子氏(小児科医)は、セロトニンの分泌を活発にする5ヶ条として、
1 朝日をたっぷり浴びましょう。
朝5時~7時が分泌のピーク
2 規則正しい生活のリズムを作りましょう。
早起き早寝の朝型リズムが大切
3 心の安心を作りましょう。
家庭でゆったりと過ごさせるように。
4 リズミカルな運動をしましょう。
朝の光を浴びながらジョギングやウォーキング、犬の散歩なども。
5 バランスのよい食事をしましょう。
タンパク質やビタミンがセロトニン作りに必要。
と言うことを述べています。また氏も有田氏と同様にセロトニン神経を鍛えると言うこと述べ、セロトニン神経を出来るだけ「繰り返し沢山刺激しておくことが人生の要」とも述べています。更に、基本的には幼児期から、なるべく早くからと言うことですが、同時に、「育て治し」と言う表現を使いつつ、いつからでも、いくつからでもとも述べています。
こうした氏らの論をもとに「我が子が不登校になったら」、何が出来るか、何をしたらいいかと言うことを整理したいと思います。
以上のような、セロトニン神経を鍛えると言う観点から言えることは、ストレスに対する耐性をつける。そのことで、物事に取り組む意欲を高めると言うことになります。そのために、まず家で出来ることは、生活のリズムを整え食事もきちんと取り、軽くてもいいから運動をする、散歩をすると言うことになります。そして日の光(朝日)をたっぷり浴びると言うことになります。
但し、現実問題として不登校になっている児童生徒さんが、朝の散歩がいいからと言って、散歩に出られるだろうか。まず不可能だろうと思われる。もちろん可能ならば是非やる方がいい。
しかし、実際無理なことが多い。外に出られるくらいなら、学校へ行けるはずだ。なぜ行かないのだと言うことになる。また、近所の目も、世間の目もそのような視線を振りかけてくる。本人もそのことを自覚し、恐れている場合が多い。従って、少なくとも初期の段階でいきなり朝の散歩をすることは、不登校の子たちには、よいことだと分かっていても出来ないことのように思われる。
従って、もし保護者の方なりに時間的ゆとりがあるのなら、車などに乗せて、隣町など距離を離し、近所の方や児童生徒の知り合いなどに出会わない場所で、散歩なりの活動をすることがとりあえず、取り組めることかなと思われる。自転車で行けるなら運動もかねて尚いい。
不登校の場合、外出することの意味は、単に太陽を浴びセロトニンを増やすという意味だけに留まらず、外の世界との接点を持つという重要な意味があるように思われる。初期の段階ならばともかく、長引いた場合、義務教育段階であるならば、学校なりが様々な形で関わってくれる。ところが、義務教育が済んでしまうと、そうした関わりがほとんどなくなるくらいに減ってしまう。また、本人も成長し体も大きくなり、親だけの関わりでは、どうにもならなくなる。もちろん親も当然それまでに様々な形で関わってきたけれども効果がなかったということでもあるので、あっという間に引きこもり状態という形で、数年の年月が流れてしまうことになりかねない。従って、不登校になった場合、本人がある程度落ち着いていたら、とにかく可能な限り外への出ることが重要な取り組みの一つかなと思う。
もちろん、可能ならば朝の散歩がセロトニンということからも重要であるが、朝の散歩が無理ならば、夕方でもまずは、取り組もうと言うことになる。夕方、あるいは周囲の子どもたちが下校する時間、あるいは下校してしまっている時間帯になれば、外へ出ることへの抵抗が減り、出やすくなる。夕方に犬との散歩は癒し効果もあって更にいいのかもしれない。もちろん日中でも外出が可能ならば、出かける。本人に抵抗がなければ、支援を行っている施設等へ行けるならば、行くようにする。
不登校になると、どうしても昼夜逆転と言うことになりがちになる。学校へ行きたくないと、あえて夜遅くまで起きている。朝起きられないと学校へ行かないことへのいいわけになる。そうしたケースも多く、自分でそのことを理解していて、語ってくれたりする。 例えば、
ある不登校の生徒さんが語ってくれたことで、ゲームのことがある。「ゲームは自分では逃げだと思っている。何かやっていないと不安だし、ゲーム以外に何かやることあるかな。あったら教えて」と語ってくれた。こうしたケースはもちろん一人や二人ではない。彼らは、実は自分で分かっている。こう語りながら、夜中までゲームにふける。もちろん昼間もやっていることが多い。
そこで、昼夜逆転のことも含めて考えてみると、日中に外出するなりして疲れれば、必然的に夜眠くなる。平日はなかなか取り組めないとすれば、土日に家族で思いきり出かける。それをきっかけに朝きちんと起きると言う習慣を少しずつ作る。
また、家族なりで外出することの意味は、やはり一人でいることよりも、みんなでワイワイいることの方が楽しいという感覚を取り戻す、あるいは高めることで社会へ出る意欲を高める。家族との関わりの中で安心安全の居場所をより強固なものにする。愛着の問題について述べるのは別の機会にするが、親であろうとなかろうと、信頼関係が出来ていれば大崩れしないようである。成田氏の言う5ヶ条の3(心の安心)にもあるところである。
どんな取り組みが更に考えられるだろうか。
今回はここまでにします。
次回は、この続きを書きたいと思います。
カウンセリングルーム 希望の翼です。
http://tubasa-counseling.com/
参考文献
調理による脳の活性化(第一報) 川島隆太・山下満智子ら 日本食生活学会誌(2006)
思春期のここが肝心 成田奈緒子(監修) 石川県教育委員会(平27年度版)
脳の進化で子どもが育つ 成田奈緒子 芽ばえ社(2006)
セロトニン欠乏脳 有田秀穂 日本放送出版協会
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