2014年2月17日月曜日

我が子が 不登校になったら

 不登校の児童・生徒の支援を考える際によく使われる表現に「不登校には時薬が効く」とか、「エネルギーがたまるのを待つ」とかがあります。
 
 

 こうした表現、考え方にももちろん一理はあります。これらの考え方の根底にあるのは、自分でものを考え成長する力があるのだろうから、それを信じてじっくり待ちましょう。あるいは、精神的に疲れているのだから、少し時間をおいて、癒やされるのを待ってあげようと言う思いです。そして、そうしているうちにまた元気ができてきて、つまりエネルギーがたまって、回復すると言う考えです。
  しかし、私は、スクールカウンセラーとして、あるいは、いろんな悩みを持っておられる方々と接することで、この考え方に疑問を持つようになってきています。と言うより待っていてはいけないのではないかと考えています。
 
 

 まず、不登校になっている児童生徒に、発達的な課題を持っているケースがままあります。こうした場合、例えば、心の理論であるとか、比喩・皮肉が理解できないなどの問題があったりすると、そのまま待っているだけでは、いっこうにエネルギーがたまってこないように思えます。相手が言っている言葉の裏表が理解できない状態では、実は本人には自覚がない場合が多かったりするのですが、当然言葉の行き違いが起こったりします。
 また、発達的な課題を抱えていて、本人がどうしていいか分からない状態の児童生徒さんもかなり居るように思いますし、そうした場合は往々にして、親御さん方々も、どう接していいか分からなかったりして、親子の関係が悪化し、悪循環を起こしたりするケースも多いように思われます。能力が高くて、成績もいい方の場合は、なおさらこじれる場合もあるように思われます。これが出来るのになぜこれが出来ないのか、それが不思議でならない。そうした状況を受け入れられないことも多々あるように思います。かといって、待てば改善されるかというとそうではないように思うのです。どうしていいか分からないときに、エネルギーがたまるのを待つというのは、果たしてどういうことだと言うことになりかねない。
 

 もちろん発達的な課題に対処するには、それなりの知見が必要かも知れません。しかし、かといって、では待つのか、何もしなくてもいいのかと言う思いを持っておられる親御さんも多いのではないかと思われます。
 
 

 ここでは、発達的課題があろうがなかろうが、まずやれることはないだろうかと言うことを考えてみたいと思います。
 

 それで、まず、最初にエネルギーとはどのようなものかと考えてみます。意欲がない、やる気がない状態が、エネルギーがない状態と考えてみます。そうすると、その正体は、例えば、セロトニンやドーパミンなどのような脳内の神経伝達物質と考えることが出来るのではないかと思います。セロトニンやドーパミンは、意欲であったり、快感を感じさせたりするものです。とすると、そうした物質は、例えば朝日を浴びたり、散歩したり、運動したりすることで出てくると言われています。散歩が可能なら、自転車に乗っての運動などもかなり有効な方法のようです。
 そういうことでセロトニンやドーパミンなどが出てくる。つまり、意欲ややる気が出てくるとすれば、「時薬」より「単なる見守り」より、朝日を浴びるようにする、散歩に出かける、自転車に乗るなどの方がいいのではないかと考えてしまいます。また、散歩をしながら、徐々にでも、活動の範囲・種類を増やす方が理にかなっていると思われます。そして少しずつでも、学校の方へ近づくことも視野に入れたり、また、買い物などをすることで、家族の中での役割を果たすことも大きな意味があるように思われます。
 
 

 また、森田直樹氏は「不登校は99%解決する」の中で1日に3つ以上ほめることが解決の方法と述べています。これも実は、エネルギー論の一つです。が、褒めることによって、セロトニンが出るだろうし、また、自尊感情が高まり、行動への意欲が促進されると思われます。従って、「時」を待つ方法とは全く異なり、積極的に働きかけてエネルギーを補給する方法かと思われます。また、行動療法的にも意味があるかと思います。
 
 有田秀穂氏によれば、リズム運動が、セロトニン神経を鍛えると述べています。その中には、上記のもの以外にチューインガムを噛むことも入っています。もちろんご飯をしっかり噛むことも含まれます。氏は他に呼吸法なども効果ありとデータを示しています。もちろん不登校の児童生徒に呼吸法がいいからと言って、いきなりやることはあまり現実的ではないかも知れません。
 
 また、家の手伝いなどもとてもいい取り組みと思われます。例えば、おすすめは食事を作ることです。これには、まずプランニングをするという側面があります。大根を切ることは、当然その先に味噌汁であるとか、あるいはぶり大根なら、ぶり大根がイメージされているはずです。つまりメタ認知(自分が何をどう理解しているかについての理解)を鍛えることにもなると思われます。イメージ化の効果も期待できそうです。味噌汁ができあがれば、達成感もあります。もちろん本格的なものを作ることになれば、調べたり買い物をしたりという新たな活動へと幅も広がります。更に、出来た料理を家族が味わって「おいしい」の一言もあれば、充実感や存在感も生まれます。共感性にも効果がありそうです。そうしたことで、また、人と共にあることの充足感も生まれるように思われます。人と交わることのうれしさや、面白さを少しでも多くを体験することは、学校や社会へ出るモチベーションを高めるためには、どうしても必要なことのように思われます。
 当然、役割取得能力を高めるためにも有効のように思われます。他者の視点に立ってものを見、考えることも体験できるように思われます。食事を作る場合は、主に母親の立場であったりします。
  もちろん、お掃除であったり、お風呂当番だったり、それぞれの事情や本人の思いの中で取り組むことはその通りですが。
 
 不登校になったときに家族は何が出来るかと言うことで少し書いてみました。何かのお役に少しでも立てればと思います。

     この話の続編として、「我が子が不登校になったら 続」もアップしてあります。そちらの方も     読み合わせて下されば幸いです。

    我が子が不登校になったら 続々編も書きました。併せてお読み下さい。

カウンセリングルーム希望の翼
tubasa-counseling.com/


参考文献
   有田秀穂  セロトニン欠乏脳    日本放送出版協会
   森田直樹  不登校は99%解決する

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