2014年1月26日日曜日

発達の問題とアセスメント

 自閉症スペクトラム障害の問題はよく言われるように①コミュニケーション②社会性③想像性 の問題ですが、実はその根底に、認知・言語、感覚・知覚の問題がある場合が多いようです。従って、情緒や対人関係にのみ焦点を当ててアプローチしようとしてもうまくいかない場合が多かったりします。
  例えば、学校なんかでは、生徒指導や生活指導とかで、問題を起こした児童生徒に対しての指導として、種々の取り組みが行われます。しかし、この指導が、なかなか通らないと言ったことがしばしばあったりします。勉強ができるのに、能力が高いのに、なぜと思われるケースもよく見受けられます。このような場合は、認知や感覚・知覚に問題がないかのアセスメントをする必要があるように思います。認知や感覚・知覚の過敏といった問題が、実は本人の困り感に直結している場合が多く、また、本人自身もこれを理解していないケースも多いのです。
 事例で考えてみますと、ある中学生の女子生徒で、不登校で、1週間も2週間もお風呂に入らないし、どうもおかしいと言うことでしたが、よくよく聞いてみると、過敏性があって、どうにも入浴は嫌だと言うことでした。一般的には、お風呂は本当に気持ちのいいもので、疲れもとれるし癒やされる。だから、なぜ入らないのだと言うことになるのですが、本人にとっては苦痛そのもののようでした。
 また、他の事例で考えますと、ある方は「念」の字を書き写すのに、何回も何回も見ながら、少しずつ書き足して、書き足しして、書き写しの課題を完成させました。ちなみにこの方は、全体視知覚の課題に関しては、満点でした。細かい細部の視知覚、細部視知覚に関してはかなり問題を抱えているようですが、全体視知覚に関しては、問題ないと言うことです。
 全体視知覚に問題があると、心の理論の獲得、つまり対人関係に問題を抱えたりするケースが多くなってきます。反対に、細部知覚に問題を抱えると、文字や数概念の形成が弱く、文字は読めても文章理解や算数、数学の学習に困難を示す場合が多いようです。
 もう少し付け加えて言いますと、同じようにアセスメントした方に、四十代の方が見えますが、この方は、全体知覚の問題を見事に外していました。対人関係のトラブルを抱え、悩んでおられます。おそらく、この方は長い間、このようなものの見方をしていたと思われます。私たちの情報の多くは、目と耳から獲得します。もちろん舌であったり、皮膚であったり鼻であったりもしますが。いずれにしても、そうした情報の入力に偏りがあったとすれば、必然的に、ものの見方も影響を受けると思われます。
 お子さん方の中には、集団から外れてしまい、活動ができないと言う問題がある方もいますが、そうした方には、聴覚の過敏さや集団遊びのルールが難しくて理解できないなどの問題を抱えていたり、刺激に振り回されやすいと言った問題があったりします。
 また、LDの方の特徴の、いわゆるだらしなさの問題は、運動協調障害による不器用さのためだったりする場合があります。児童生徒さんが、だらしない形で授業を受けていたりすると、当然先生方や親御さんは指導します。それは至極当たり前のことですし、他の生徒さんの手前もあります。ところが、本人にはそれがなかなかできなかったりします。「母が言っていることは分かる。でも、できない。それが悔しい。」と、文章に書いている方が見えました。こうした場合、先ほども書きましたが、「本人自身にもなぜなのか分からない」ケースも多いように思います。
 本人さんが分かっているつもり、分かるだろうと言うことで、私自身が過重な負担を強いてしまったケースもかなりあるように思います。誠に申し訳ないことです。
 まとめて言えば、やはり一人一人のアセスメントを丁寧に行う。また、一人一人の思いを丁寧に聞くと言うことが大切なんだと言うことを、日頃のカウンセリングを通して、つくづく思うところです。   

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