2015年10月16日金曜日

不登校になりそうだ どうしたらいい?

不登校になりそうだ どうしたらいい? 
 
   車で送っていけるのだったら、連れて行きましょう。
 
 どうしても乗らない。どうしても降りない。その場合は無理はしない。
 不登校には、「頑張りすぎて、行きたいけれども行けない」とか、「少しゆっくり休ませましょう」「登校刺激をせずに」とか、あるいは「登校刺激を与えてはいけない」などと言った固定的な考えが広く行き渡っているように思われます。
 
   米澤(2011)は、「高い不登校の一因」となっていると述べ、不登校児(生)には、「学校へ行きたいが行けない子」だけではなく、
 
   ① 学校へ行くことの意義を感じないマイペース型
 ② 頑張ることへの懐疑型
 ③ 萎縮緊張型
 ④ 他者による自己への評価についての不安が高く、逃避や防衛に走る自己評価不安型
 ⑤ 環境不適応、適応不全によるもの(小1・中1、転校生に多い)
 ⑥ 友人関係とのトラブルが原因の親和不安
 ⑦ 母親等との心理的な分離を不安に感じる分離不安型
 ⑧ 虐待のうちネグレクトによるもの
 ⑨ 不登校という行動で教師や親の注目を集めたい自己への注目希求型
 ⑩ 睡眠障害によるもの
 
   等々様々な理由・タイプがあり、刺激や支援が必要な場合があり、それぞれの事情と 特性を理解した支援が必要であると述べ、更に氏は、学校現場にも広く広報していく必要があると言っている。
 

    私自身、例えば親御さんや学校の先生方から「学校へ来させていいですかね」と言った質問を受けることがしばしばある。そうしたときどう答えるか。「車に乗せてでも連れてこられるなら登校させましょう」。本人が車に乗らないとか、車から降りないとかして、登校することを強く拒むなら、もちろん、「無理をしない」と答えています。その時は、本人の思いに寄り添いながら、理解を深めながらそれに応じた取り組みをすると言うことになります。
 もちろん、学校に来ているからと言ってそれでよしというわけではなく、少なくとも「登校渋り」があるわけですから、米澤が指摘しているような観点から、理解を深め支援を講じるということになります。
 
   いずれにしても、今だに単純に「登校刺激を与えない」「ゆっくり休ませる」などと半ば機械的に取り組まれていることが存外多いことに、氏と同様に私自身も違和感を感じています。


 参考文献
   和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要(2011) 
      学校教育における発達支援の事例検討    米澤好史

カウンセリングルーム 希望の翼です。
      http://tubasa-counseling.com/
  
 

2015年10月7日水曜日

「愛着障害」脳が20%減少

    新聞より
 
    親から虐待を受け、情緒不安定になる「愛着障害」の子どもは健常な子と比べ、視覚や感情の働きに関わる脳の部位の容積が減っていることが福井大の研究で分かった。障害の仕組みの解明や予防法の開発につながる可能性がある。

  福井大の研究グループが十~十七歳の愛着障害の二十一人を対象に、脳を磁気共鳴画像装置(MRI)で調べた。後頭葉で脳神経細胞が集中する灰白(かいはく)質の容積が局所的に少なく、虐待を受けなかった健常な二十二人と比べ、平均で20%減っていた。情緒面や対人関係の問題が深刻な子ほど、減る傾向にあった。
 
   愛着障害は身体、心理的虐待やネグレクト(育児放棄)が原因で起きる。発達障害と酷似した症状のため診断が難しく、国内の統計はない。
 
   海外には施設や里親の養護を受ける子の四割に愛着障害があるとの研究がある。
 研究の中心を担った島田浩二特命助教(34)は「障害になる前に異常が見つかれば、発症を予防しやすくなる可能性もある」と話す。


   2015年(平成27年)10月7日(水) 中日新聞 CHUNICHI WEB


カウンセリングルーム 希望の翼です。
      http://tubasa-counseling.com/
  
 

2015年9月19日土曜日

我が子が不登校になったら  Ⅳ

我が子が不登校になったら Ⅳ
 
 どんな取り組みが更に考えられるだろうか。(前回の続き)
 
  家族と外へ向かって出かけることは前回考えたところですが、一緒に遊ぶことは遊びを通して確かな関係性を構築することいなる。更に、そうした遊びの中で、例えば、家で本人が興味を持っているなら将棋やオセロなどをするのもありだと思う。特にゲームなどに夢中になっている人をゲームから少しずつ距離をとらせ、離脱させる方法の一つとも言えるだろうし、対人関係をより豊かなものとするためにもなると思われます。
 人と人との関係性を構築する上で、趣味というのは大きな介在物(仲立ち)となり得る。また、外へ出ると言うことであれば、魚釣りもいいように思われます。親子で釣り自慢や、道具の工夫などやりとりするのも楽しい。ボウリングなど軽い運動系のものもいいかもしれない。好きなことに打ち込めるというのは人生をより有意義に過ごすためには、どうしても必要なことであるように思われます。
 自分の話になるが、子どもの頃に父に何度も連れて行ってもらった釣りを、今この歳になって、思い出しながら、週に2日は釣りに出かけている次第です。
 料理を作るのも非常にいいようです。料理作りは、プランニングであるとかの色んな脳を刺激をする要素が含まれており、また、コミュニケーション能力を高めるという研究もあります。更に、それを食べた家族が「おいしい」「有り難う」などと言えば、本人の自尊感情も高まるし、存在感、有用感も高まることが期待出来ます。もちろん幼い子ならば、最初は一緒にし、お手伝いという形で、可能になれば少しずつ任せる形を取のがいいと思われます。一緒に、コラボすることの意味と、やがては自立すると言う意味で少しずつ任せると言うやり方が言いように思われます。
 少し話はずれますが、高橋和子氏は「家庭でできるソーシャルスキル援助」(高機能自閉症児を育てる、2010)で、例えば、食事に関してはカップラーメンを作ることから始めています。氏の取り組みでは、初めは一緒に床屋へ行きそのうち一人で床屋へ行くと言ったような取り組みや電車の乗り方が切符の買い方から始めて、やがては一人の小旅行を行うなど、いろいろな取り組みが年齢を軸にして、この年齢ではこれが出来るようにとかプランされています。自活、自立に向けて取り組みのあり方の一つとして大いに参考になるのではないかと思います。
  私自身の関わりの実際の例ですが、不登校の中学生の相談で見えていた母親とのやりとりで、「そういえば父親が、若い頃ドラムをやっていた。」と言うことで父親に話したら、久しぶりに「息子と一緒にやるか。」となり、父親もその気になって取り組んで、やがてついには、彼は外で披露し始めたということでした。
  楽器はともかくとして、カラオケもいいのではと思います。思い切り歌を歌うことで、発散し心のケアにもなり得る。また、カラオケをもとに、お友達と歌うきっかけにもなり得る。人と人をつなぐ物は何も言葉だけでなく、いろいろな物でつながっている、と言うよりむしろ趣味であるとかの取り組んでいる物を介してつながり合っていることの方が多いように思われます。従って、もし家族で何かを取り組め、家族で楽しめるならるようなことがあれば、それに越したことはないように思われます。それを介在させて人と人とのつながりが広がればいいように思われます。
 
   また、重要なことは、家族であろうと誰であろうと、人と一緒に何かをして楽しかったと言う思いであるとか、感覚とか感情をより沢山豊かに経験出来ていることが、その後の社会へ出るための意欲を高めると思われます。不登校になったと言うことは、恐らく大きな要因の一つとして、人間関係につまずいた可能性があると思われます。そうすると、苦い経験をした、あるいはしているのであって、となれば社会(学校)へ出るためには、それを乗り越えるための更なる意欲が必要になってくるように思われます。そのための取り組みの一つとして、今何が取り組めるかと考えて時に重要な取り組みの一つではないかと考えられます。人と何かをして楽しかったと言う思いが、意欲を高めると考えられます。社会って楽しいな、面白いなと言う思いがなければ、自分の世界だけに居ればいいやと言うことになりかねない。その方が気楽だし。
 

 ところが、太陽を浴びて、散歩もして元気が出てきた。けれども学校へ行かない。親御さんは「元気なのに、家でゴロゴロして、ゲームして」「腹が立つやら、悲しいやら」「何で、何で」「そう思ったらたまらない」とおっしゃいます。周囲から、どうしても怠け者、怠けているとみられてしまいがちですし、親としても、理解はしていたとしても、苛立ちを覚えるの当然であるように思われます。
 
 が、子どもの方は、行かないのではなく、行けない現実があるようです。「先生、移動教室へ行くときも、何をするときも誰も声かけてくれず、いつも一人でいる寂しさ分かりますか。」「ぽつんと一人で、更衣室の暗い部屋でに居る。いつもそんなん。」「このつらさ分かりますか。」「おかあさん!何も分かっちゃいない。」「授業中はまだ誰もあまり話をしないのでいいけど、休み時間、ひとりぼっちです。」不登校のほとんどの子たちがこのように言います。誰にも相手にされていないつらさ。意識的にそうされている場合もあるだろうし、いつの間にかそうなった場合もあるかも知れない。色んなケースがあるように思われます。また、逆に、多人数や人との関わりが苦手な子たちも少なからず居るように思われます。そうした子たちもやはり教室には入れないケースが多いようです。
 そうした子どもたちの思いを、まず理解することが不登校の問題に対処するため大前提ではないかと思います。そのことがなければ、本人さんの応援を考えたときにうまくいかないことが多い。私自身の失敗ケースですが、「要は学校へ行けって言うことでしょ。」と言われて、面接は終わりになった。苦い経験をもとに、遠回りのようですが、本人さんの思いであるとか、やはり成長発達を基本に据えた応援が肝要ではないかと、思っているところです。
 
 今回はここまでにします。 
 
 次は居場所について整理し考えたいと思います。

カウンセリングルーム 希望の翼です。
      http://tubasa-counseling.com/
  
 
 参考文献
   調理による脳の活性化(第一報)  川島隆太・山下満智子ら  日本食生活学会誌(2006)
   思春期のここが肝心           成田奈緒子(監修)      石川県教育委員会(平27年度版)  
   脳の進化で子どもが育つ       成田奈緒子          芽ばえ社(2006)
   セロトニン欠乏脳            有田秀穂            日本放送出版協会
   高機能自閉症児を育てる       高橋和子           小学館() 

2015年9月10日木曜日

我が子が不登校になったら  続々編

 以前に「我が子が不登校になったら」で、有田秀穂氏の「セロトニン欠乏脳」(NHK出版)からの引用で、氏がセロトニン神経を鍛えるための方法としてあげていた、いくつかの具体例を書きました。
 例えば、リズム運動やチューインガムを噛む、呼吸法などを書きました。今回は、このセロトニン神経を鍛える、育てることを、不登校になったらという視点で、整理してみたいと思います。
 
  まず、セロトニンとは、どういう物なのかを整理します。
 セロトニンは脳内の神経伝達物質の一つで、不安を抑え、食欲や自律神経を活発にし、心身の健康を支えるもの、そして、セロトニンが不足すると、健康を推進する機能が低下し、ストレスに弱く不安が高い状態になると言う働きを持った脳内の物質である。
 
 成田奈緒子氏(小児科医)は、セロトニンの分泌を活発にする5ヶ条として、
 
 1 朝日をたっぷり浴びましょう。
       朝5時~7時が分泌のピーク
 2 規則正しい生活のリズムを作りましょう。
       早起き早寝の朝型リズムが大切
 3 心の安心を作りましょう。
              家庭でゆったりと過ごさせるように。
 4 リズミカルな運動をしましょう。
       朝の光を浴びながらジョギングやウォーキング、犬の散歩なども。
  5 バランスのよい食事をしましょう。
              タンパク質やビタミンがセロトニン作りに必要。
   
  と言うことを述べています。また氏も有田氏と同様にセロトニン神経を鍛えると言うこと述べ、セロトニン神経を出来るだけ「繰り返し沢山刺激しておくことが人生の要」とも述べています。更に、基本的には幼児期から、なるべく早くからと言うことですが、同時に、「育て治し」と言う表現を使いつつ、いつからでも、いくつからでもとも述べています。
 こうした氏らの論をもとに「我が子が不登校になったら」、何が出来るか、何をしたらいいかと言うことを整理したいと思います。
 
   以上のような、セロトニン神経を鍛えると言う観点から言えることは、ストレスに対する耐性をつける。そのことで、物事に取り組む意欲を高めると言うことになります。そのために、まず家で出来ることは、生活のリズムを整え食事もきちんと取り、軽くてもいいから運動をする、散歩をすると言うことになります。そして日の光(朝日)をたっぷり浴びると言うことになります。
   
  但し、現実問題として不登校になっている児童生徒さんが、朝の散歩がいいからと言って、散歩に出られるだろうか。まず不可能だろうと思われる。もちろん可能ならば是非やる方がいい。
  しかし、実際無理なことが多い。外に出られるくらいなら、学校へ行けるはずだ。なぜ行かないのだと言うことになる。また、近所の目も、世間の目もそのような視線を振りかけてくる。本人もそのことを自覚し、恐れている場合が多い。従って、少なくとも初期の段階でいきなり朝の散歩をすることは、不登校の子たちには、よいことだと分かっていても出来ないことのように思われる。
  
  従って、もし保護者の方なりに時間的ゆとりがあるのなら、車などに乗せて、隣町など距離を離し、近所の方や児童生徒の知り合いなどに出会わない場所で、散歩なりの活動をすることがとりあえず、取り組めることかなと思われる。自転車で行けるなら運動もかねて尚いい。
  不登校の場合、外出することの意味は、単に太陽を浴びセロトニンを増やすという意味だけに留まらず、外の世界との接点を持つという重要な意味があるように思われる。初期の段階ならばともかく、長引いた場合、義務教育段階であるならば、学校なりが様々な形で関わってくれる。ところが、義務教育が済んでしまうと、そうした関わりがほとんどなくなるくらいに減ってしまう。また、本人も成長し体も大きくなり、親だけの関わりでは、どうにもならなくなる。もちろん親も当然それまでに様々な形で関わってきたけれども効果がなかったということでもあるので、あっという間に引きこもり状態という形で、数年の年月が流れてしまうことになりかねない。従って、不登校になった場合、本人がある程度落ち着いていたら、とにかく可能な限り外への出ることが重要な取り組みの一つかなと思う。
 
  もちろん、可能ならば朝の散歩がセロトニンということからも重要であるが、朝の散歩が無理ならば、夕方でもまずは、取り組もうと言うことになる。夕方、あるいは周囲の子どもたちが下校する時間、あるいは下校してしまっている時間帯になれば、外へ出ることへの抵抗が減り、出やすくなる。夕方に犬との散歩は癒し効果もあって更にいいのかもしれない。もちろん日中でも外出が可能ならば、出かける。本人に抵抗がなければ、支援を行っている施設等へ行けるならば、行くようにする。
  不登校になると、どうしても昼夜逆転と言うことになりがちになる。学校へ行きたくないと、あえて夜遅くまで起きている。朝起きられないと学校へ行かないことへのいいわけになる。そうしたケースも多く、自分でそのことを理解していて、語ってくれたりする。 例えば、
  ある不登校の生徒さんが語ってくれたことで、ゲームのことがある。「ゲームは自分では逃げだと思っている。何かやっていないと不安だし、ゲーム以外に何かやることあるかな。あったら教えて」と語ってくれた。こうしたケースはもちろん一人や二人ではない。彼らは、実は自分で分かっている。こう語りながら、夜中までゲームにふける。もちろん昼間もやっていることが多い。
  そこで、昼夜逆転のことも含めて考えてみると、日中に外出するなりして疲れれば、必然的に夜眠くなる。平日はなかなか取り組めないとすれば、土日に家族で思いきり出かける。それをきっかけに朝きちんと起きると言う習慣を少しずつ作る。
  また、家族なりで外出することの意味は、やはり一人でいることよりも、みんなでワイワイいることの方が楽しいという感覚を取り戻す、あるいは高めることで社会へ出る意欲を高める。家族との関わりの中で安心安全の居場所をより強固なものにする。愛着の問題について述べるのは別の機会にするが、親であろうとなかろうと、信頼関係が出来ていれば大崩れしないようである。成田氏の言う5ヶ条の3(心の安心)にもあるところである。
 
 どんな取り組みが更に考えられるだろうか。

今回はここまでにします。
 
   次回は、この続きを書きたいと思います。


  カウンセリングルーム 希望の翼です。
      http://tubasa-counseling.com/
  
 
 参考文献
   調理による脳の活性化(第一報)  川島隆太・山下満智子ら  日本食生活学会誌(2006)
   思春期のここが肝心           成田奈緒子(監修)      石川県教育委員会(平27年度版)  
   脳の進化で子どもが育つ       成田奈緒子          芽ばえ社(2006)
   セロトニン欠乏脳            有田秀穂            日本放送出版協会

2015年8月31日月曜日

発達の支援   新聞記事から

 発達障害の子、社会生活訓練…やる気引き出しゆっくりと

 規則正しい習慣、我慢学ぶ
 
 発達障害のある子どもたちは、成長と共に行動やコミュニケーションの問題に直面する。
 だが、早期に適切なトレーニングを行うと、社会生活上の困難は大幅に軽減できる。小児科医の平岩幹男さん(64)が取り組むライフスキルトレーニングをみた。
 
 トレーニングは、発達障害の療育経験が豊富な平岩さんが考案した。対人関係を円滑にするコツを学ぶ従来の生活技能訓練をベースに、「生活習慣を規則正しくする」「必要な時に我慢する」「自分の感情をコントロールする」など、幅広い技術を子どもたちに習得してもらう。怒ったり、無理強いしたりして覚えさせるのではなく、子どものやる気を引き出し、ゆっくり進めるのがポイントだ。
 例えば、イスにじっと座っていられない小学生の場合。「座って」と伝えると従うが、2分と耐えられず、すぐに歩き回ってしまう。何度言っても分からないと、大人はいら立って叱りつけるが、それではうまくいかない。座り続けられない理由を、平岩さんは「いつまで座っていればいいのかはっきりしないので、落ち着かないだけ」とみる。
 
 そこで、時間を1分と決めて座ることから始める。「一緒に格好良く1分座ろう」などと誘い、机に砂時計を置く。砂が落ちる様子を見るうちに1分たったら、「やったね」と言ってハイタッチする。うまくできた時のハイタッチや「すごいね」「ありがとう」などの言葉が、子どもの達成感を育てる。
 続いて3分、5分と座る時間を延ばしていく。時間の延長と共に、ただ砂時計を見ているだけでなく、本を読む、話を聞く、などの動作を加えていく。こんな調子で1、2か月かけて時間を延ばし、学校の1時限の間、座っていられるようにする。
 
 ただ、座っていられない子どもには、実は座る姿勢を長く続けられない運動障害を抱えている子もいる。このような場合、トランポリンなどを用いた重心コントロールの練習をすると効果がある。
 
 関東地方の小学4年生の男児は、イスに長く座れないなどの落ち着きのない行動が目立っていた。そのため、高い学習能力があるのに特別支援学級を勧められたり、担任に怒られて不登校に陥ったりした。だが、平岩さんのライフスキルトレーニングで落ち着き、弱点だった読み書きも、パソコンを使った日記作成などの指導で克服。今は元気に学校に通っている。
 
 ライフスキルトレーニングは、コミュニケーションの技術も重視し、質問に答える練習や質問する練習、顔を見て話す練習、相手の話を聞く練習、他人の会話に突然割り込まない練習などをする。相手の目を見ることに強いストレスを感じる子もいるので、そのような場合は、相手の鼻を見ながら話す練習などをする。
 
 発達障害のある子どもたちは、行動やコミュニケーションの問題で怒られたり、いじめられたりしやすく、自尊心が低下して心の病に陥りやすい。平岩さんは「教師らが発達障害の正しい指導法を身につけ、子どもの可能性を大きく伸ばしてほしい」と話している。(佐藤光展)


感想
 やってはいけないことは、「特訓」 スモールステップで、少しずつ。本人のペースに合わせて。どんなにいいと分かっていることでも、無理をして本人の自尊感情を損ねてしまうと、元も子もない。返ってやらなかった方がよかったと言うことにもなりかねません。
 「生活習慣」を規則正しくと言うことも、とても大切なように思います。セロトニンの問題もそうですが、何より本人が、余分なことを考えずにすみ、他のことを身につけるゆとりが生まれる。今日は何をどうするかなどといちいち気にして気をもむより、よほど精神的に楽なように思われます。それは定型発達の子も同様かなと思いました。
 ただ日記指導に関しては、私の経験上結構苦戦する場合が多い。いいことと分かってはいるけれども、文章を書くこと自体にかなり抵抗を示す場合が多いから。そういう場合は、お話を聞きながら支援者の方が、文章化して手助けする形で始めるのがいいように思われます。


2015年6月3日水曜日

保護者の「叱咤激励」空回り?

保護者の「叱咤激励」空回り? 
                 子どもの能力向上に関連見られず‐斎藤剛史‐
                                2015/06/01
 こんな記事がありました。
 
 子どものしつけはなるべく優しく……と思っていても、何度言ってもできない時や忙しい朝などは、ついつい叱ることも多くなります。叱るのも「もっとがんばれ」と励ますのも、子どものためを思えばこそ。ところが、そんな「叱咤(しった)激励」的な子育てでは、社会生活を送るために必要な力があまり身に付かないということが、独立行政法人国立青少年教育振興機構の調査結果でわかりました。
 調査は2012(平成24)年9~10月、全国の公立の小学4~6年生、中学2年生、高校2年生の子どもと、小学4~6年生の保護者を対象に実施し、子ども役1万7,000人と保護者約7,800人から回答を得ました。調査では、社会生活のために必要な力を「コミュニケーションスキル」(初めて会った人に自分から話しかけるなど)、「礼儀・マナースキル」(ありがとう・ごめんなさいを言うなど)、「家事・暮らしスキル」(洗濯物をきれいにたたむなど)、「健康管理スキル」(夜更かしをしないなど)、「課題解決スキル」(目的達成に向けて努力するなど)の5分野に分けて、保護者の接し方と子どものスキル習得の関係を調べました。
 まず、子どもにもっとがんばりなさい、しっかり勉強しなさいなどと言う「叱咤激励」的接し方をよくする家庭における「コミュニケーションスキル」が高い子どもの割合は30.2%、時々するという家庭は30.0%、あまりしないという家庭は30.2%で、ほとんど差が見られませんでした。「礼儀・マナースキル」の高い子どもの割合も、叱咤激励をよくする家庭は57.9%、時々する家庭は58.3%、あまりしない家庭は59.0%で、やはり差があまりありません。ほかの分野のスキルもほぼ同じです。つまり子どもを叱咤激励しても、生活スキルの習得にはほとんど結び付かないということになります。どうやら、子どもに対する叱咤激励は、保護者の空回りやひとり相撲に過ぎないようです。
 一方、生活スキルの能力が高い子どもの割合に大きな違いが見られたのは、勉強以外の体験を積極的にさせたり、子どもをほめたり、自分の体験を話したりするなどの「体験支援」的接し方をしている家庭でした。たとえば、「礼儀・マナースキル」が高い子どもは、体験支援的接し方をよくしている家庭は63.8%、時々している家庭は59.0%、あまりしていない家庭は52.9%となっています。また「課題解決スキル」が高い子どもは、体験支援的接し方をよくしている家庭が52.7%、時々している家庭が49.2%、あまりしていない家庭は41.9%でした。このほか、きちんとあいさつさせる、早寝早起きさせるなど「生活指導」的な接し方では、「健康管理スキル」の高い子どもの割合は、よくしている家庭が34.8%、時々している家庭が25.4%、あまりしていない家庭が16.4%などとなっており、接し方の度合いにより一部の生活スキルで習得状況の違いが見られました。
 社会生活を送るのに必要な力を子どもに身に付けさせるためには、小言を言いながら励ますよりも、保護者自身が手本を示したり、さまざまな体験を子どもにさせたり、きちんとした生活習慣を実行させたりすることのほうが、実はより効果的といえそうです。

感想 
    以前にこのブログで書きましたように、叱ることは本人さんなりの自尊感情を下げることになったりします。自尊感情が下がると意欲も下がります。
  叱咤激励で外側から、つまり親の側からの勉強なりへの取り組みに対する意欲付けより、「興味・関心」「解る・知るおもしろさ」「使える楽しさ」など、本人の内側から興る内的な動機を喚起する方がより効果的であるように思われます。また、内的な動機が興った際には、興ったそのことを認めることで、よりいっそう興りやすくなるようです。
  親子で一緒にやることは関係性も高まり、その後の人間関係をより豊にする動機付けにもなるようです。人と一緒に何かをすることの楽しさを体感するからです。また、そうしたことの積み重ねは、人との共感性をより豊に育むことになるようです。発達的な課題を持っている児童生徒さんは特に、必要なようです。
  また、手本を見せることについてもありますが、どんなにじたばたしても、親は子ど もの人生のモデルと言うことなのだと言うことのようです。実際、大人でも、会社なり で自分の上司なりをモデルとして、自分を育てている訳ですから。人にはやはりモデル のような存在が必要なようです。もちろん、反面教師といった言葉もありますが。

カウンセリングルーム希望の翼です。
http://tubasa-counseling.com/

2015年4月24日金曜日

ADHD 運動が集中力を改善

運動がADHDの子どもの注意力や集中力を向上させることが判明
2015年4月20日 19時0分
GIGAZINE(ギガジン)  
By Brittany Randolph
 
 不注意、多動性、衝動性といった症状を持つADHDは、いまだに原因が完全に判明していない発達障害の1つで、子どもだけでなく大人になっても症状に苦しむ人たちがいます。ADHDの症状を持つ人、特に子どもは学校での成績に悪影響を与えることがあり、今までにさまざまな改善策が模索されてきました。そういった中で、ある大学の研究から運動がADHDの子どもの注意力や集中力を向上させ、学校での成績を改善する可能性があることが判明しています。

Measurement of the Effect of Physical Exercise on the Concentration of Individuals with ADHD
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4372555/
 
 発症原因についていまだに議論が分かれているADHDは根本的な治療法が見つかっていない一方で、2014年に運動によってADHDの症状が回復したという報告がありました。ただし、運動がADHDの患者に及ぼす影響を測定して定量化する実験は実施されていませんでした。そこで、ブラジルのモジ・ダス・クルーゼス大学とサンパウロカトリック大学の合同研究チームは、ADHDの患者を対象に実験を行い、運動がADHDの症状に与える影響を統計・分析し定量化に成功したわけです。
 合同研究チームが行った実験は、被験者に5分間のランニングをしてもらい、ランニングの後にゲームをプレイさせて、その結果を統計テストやポストホックテストを用いて分析するというものです。実験は、10歳から16歳の合計56名の被験者を「ADHDの症状アリでランニング・ゲームプレイの両方参加(グループ名:GE-EF)」「ADHDの症状ナシでランニング・ゲームプレイの両方参加(GC-EF)」「ADHDの症状アリでゲームプレイのみ参加(GE)」「ADHDの症状ナシでゲームプレイのみ参加(GC)」4つのグループに分けて行われました。

By John R. Hofmann Sr.

 実験では、まずグループGE-EFとGC-EFの被験者が休憩なしのリレーレースを5分間行い、5分のインターバルを挟んでゲーム「プリンス・オブ・ペルシャ」をプレイ。ゲームのプレイは事前にゲーム内で行うタスクが決められており、被験者は可能な限り早くタスクを完遂する必要があります。タスクを完遂するには、ゲームのシナリオをよく読んで理解し、そこからヒントを得る必要があり、集中力や論理的思考力が問われるものとのことです。
 ゲームプレイには5分間の運動を行わなかったGEとGCのグループも参加し、研究チームは4つのグループの実験結果をダゴスティーノ検定・クラスカル・ウォリス検定・ポストホックテストを用いて分析。なお、ゲームプレイの結果に正確性を持たすために、被験者には事前に別のゲームをプレイしてもらい、ゲームの腕前が中級レベルと判断された子どものみが採用されました。
 各グループの実験は別日に行われましたが、実験に用した時間は全てのグループで統一。研究グループが実験結果を分析したところ、ランニングの後にゲームをプレイしたADHDの症状を持つGE-EFのグループは、ゲームプレイのみ参加したADHDの症状を持つGEよりも、35%高い数値を記録しました。つまり、ゲームの前に運動を行うのと行わないとでは、運動したほうが約35%ほど良い結果をもたらすということです。

By Erik (HASH) Hersman

 また、GE-EFのグループと、ADHDの症状ナシでゲームプレイのみ参加したGCのグループでは、分析結果に約2.5%の違いしか発生せず、非常に似通った数値を出したことも分かりました。
 研究グループは今回の実験で短時間の激しい運動がADHDの子どもの注意力や集中力を向上させることができることが判明したと結論づけています。また、運動を利用すればADHDの子どもの学校における成績向上に何らかの影響を与えられる可能性があるそうです。


カウンセリングルーム 希望の翼です。
http://tubasa-counseling.com/



2015年4月20日月曜日

リサイクルと屎尿

    能都に移住して、少し畑でもと思ってやり始めたのですが、いろいろと課題も出てきたので、図書館へ行って調べることとなり、手にしたのが「現代農業」と言う月刊誌。
  「根腐れをしない畑って?」と言うようなことを学びながらも、「意見異見」と言うコーナーの中の「屎尿の液肥利用・・・」と言う文章と出会った。書いた人は、福岡県豊前市の市長さんで、後藤元秀氏。読んで驚いたと言うか、感激したというか、とにかくこんな視点もあるものだとうれしくも思った。

   私たちと言っていいと思うが、とにかくほとんどの人にとって、屎尿処理は「高度な化学処理で飲めるほどの水にして海に放出する」ことが当たり前で、それが全てで、ベストだと思っている。少なくとも私は今の今までそう思っていた。「屎尿を発酵させて液肥化し、農地に肥料として戻す」と言ったことなど想像だにしていなかった。きれいな「水」にすることが出来るなんて、すばらしい。それが科学技術発展の大きな成果だと思い込み、屎尿を肥料にするなど半世紀も前のことではないのか、そう思っていた。
 実際私が子どもの頃、各農家には「肥だめ」と言う場所があり、そこに自分たちの屎尿をしばらく寝かせておいて、畑に撒くと言ったことが普通に行われていた。私自身も父親と一緒に天秤棒で肥(こえ)担(た)桶(ご)を担ぎ(担がされ)、畑まで運び、野菜にかけたりしたものである。もっと以前は、金品になる商品でもあったようだ。
 
   さて、その市長さんの取り組みであるが、「乾燥してカロリーの高い乾燥肥料として活用」「一袋(10㎏)30円販売」「経費として出て行くはずの肥料代がほとんど残る」「農家に好評」「悪臭がある」といったこと以外は、いいことばかりのようである。
 そりゃそうでしょう。私も鶏糞などを使ってはいますが、鶏は人間の食べているものに比べれば、大したものを食べているわけではない。人間のそれは肥料としても上等なものでしょう。人間はいいものを食べていますから。使わない手はない。ただの水にするよりよほどいいように思われます。と同時にこれこそ究極のリサイクルのように思われます。なぜなら、人間そのものがリサイクルの輪の中に組み込まれているわけですから。人間の食べて排出することが、自然の循環の一角を堂々と占めていることになりますから。
  しかし、今の私には、市長さんに頑張れとしか出来ることはない。今自分の屎尿をそのまま畑に、子ども時代のように撒くことはとても出来ないようだからです。
 
    能登に移住して出会った本の中から、思ったことを書いてみました。
 
   能登に来てからいろんなことに出会う。昨日はご近所の方に山菜の一つ、ウワバミを教えてもらって食べた。出会いたくもないが猪にも出会う。そんな日々です。

見つめ合う犬と人 安心ホルモン、オキシトシン増加

 見つめ合う犬と人 安心ホルモン増加 
 
 中日新聞(4月17日)に、人と犬が見つめ合うとお互いの体内に安心を感じるホルモン「オキシトシン」が増加すると言う記事が載っていました。麻布大学のチームがサイエンスに発表したとのことです。人間の赤ちゃんと母親が絆を強める仕組みと同じと言っています。
  また、犬にオキシトシンを鼻から投与すると、雌犬に限られていたそうですが、飼い主を見つめる時間が増加し、それに反応したのでしょうか、飼い主の尿での検査で、オキシトシンが上昇したとのことです。
 
 オキシトシンに関しては、自閉症スペクトラム障害の改善に現在研究が進められており、臨床研究が実施されているようです。対人関係の信頼感の構築に関係したりするとされているホルモンです。
 
 犬もそうなのですから、人間同士も見つめ合ったり、気持ちに寄り添ったりすることがやはり重要なのかなと思います。わかり合うとか、理解し合うためには、結局そういうことかなとつくづく思いました。

2015年4月19日日曜日

発達障害支援法 施行10年

新聞に載っていました。

発達障害支援法 施行10年で見えた課題も
2015年04月18日付け 西日本新聞朝刊
 
  法律ができることで、世の中の受け止め方も変わることがある。自閉症やアスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)といった発達障害も、その一つだろう。
 他人の感情を理解するのが困難で、とっぴな行動を取る。じっとしておられず動き回ったり、読み書きが極端に苦手だったりする。こんな症状の発達障害について内閣府の昨年度の世論調査で約9割が「知っている」と答えた。
 発達障害者支援法の施行から今月で10年になる。以前は認知度が低く、福祉の対象から外れた「谷間の障害」とも呼ばれた。本人や家族も障害に気付かないまま社会で孤立する深刻なケースもあり、超党派の議員立法で制定された。
 早期発見や学校教育、就労などでの支援を国や自治体に義務付ける法律だ。相談窓口の支援センターが各都道府県に設置され、相談数は当初の約4倍に増えた。医師が積極的に診断するようになったことも背景にあるようだ。
 ただ、障害の実情にまで理解が進んだとはいえない側面もある。
 発達障害は幼少期から特性に応じたトレーニングを積めば社会性を身に付けられ、就学や就労も可能だ。早期発見が重要になるが、国推奨のチェックリストを乳幼児健診に導入する市町村が1割を切るなど、現場に知識や情報が十分行き渡っていない。従来より踏み込んだ啓発活動が求められよう。
 障害のある児童・生徒のために配置される教職員も増えてはいるが、地域や学校で取り組みに濃淡がある。支援に厚みを持たせるためには専門家の育成も急務だ。
 最近は大人になって障害に気付き診断を受ける人も増えている。就労支援は特に力を入れたい。
 発達障害は周囲の小さな気遣いで行動が改善することも多く得意とされる仕事の分野もある。現状は就職活動や採用後の職場で人間関係がうまくいかず、引きこもったり、退職に追い込まれたりする人も少なくない。企業の理解と、それを促す行政の取り組みには見直す余地がまだあるはずだ。
 
 
   私は発達障害は、二次障害があって初めて障害と呼ぶべきかなと思っています。例えば不登校であるとか、引きこもりであるとか、うつであるとかなどです。
 新聞の記事にもあるように、周囲の関わり方によって、その人の才能を花開かせるのであり、その人らしく生きられるのだと思います。それは実は誰でも同じです。また、お互いが理解し合うためには、やはり、知識や情報が必要に思います。そういう意味では、10年経ったが、まだまだ広く理解されているとは思われないのが現状のように思われます。
  例えば、あるお子さんは母親から、「コンビニ行って、それから、スーパへ行って、その後郵便局へ回ってという」お使いを頼まれるが、自分は、コンビニ行ったら、いったん家に帰り、その後スーパーへまた出かけるという方法でないと、イライラして駄目なんだ。母親の言うことは理解できるし、そのようにやれば能率良く回れる。自分もそれが出来ないことが悔しいが、でも自分には駄目なんだと訴えていました。
 自分の側から見るとなんと無駄な動きだと思われて、腹が立って、つい叱ってしまうが、本人の側から考えると、その方法が、その人には向いているんだと言うことが多々あるように思われます。
 このような本人の特性を無視して、強引に特訓などをしてしまうと、二次障害を起こしかねません。発達的な課題を持っていると思われる方には特に、その思いやその持ち味を生かしながら、周囲も関わる必要があるように思われます。
 
 新聞を読みながら、少し考えてみました。

2015年1月6日火曜日

能登に移住します

 田舎暮らしをするために、石川県の中能登町に移住することになりました。
 

 カウンセリングルームは能登で再開します。4月から始める予定です。石川の皆さんどうぞお声がけ下さい。
 

 田舎暮らしと魚釣りがしたくて移住を決めました。お正月は能登で過ごしたのですが、真冬なのに鯵が入れ食いでした。秋に行った時は、投げ入れただけで、黒鯛が釣れました。能登の海はすごいなあと実感しました。ワクワクです。

カウンセリングルーム 希望の翼です。
http://tubasa-counseling.com/